きっちりと上まで締めたネクタイを指先で緩めながら、ディーノは職員室に入って来た。
肩に掛ける様にして持っていたのは白の薔薇の花束で、赤色の大きくて豪奢なリボンが掛かっている。
薔薇のいい香りに振り向いた綱吉はわぁ、と思わず感嘆の声を上げた。
ディーノは花束を無造作に綱吉の机の上に置いた。ばさりと大ぶりの花弁が舞う。
「綺麗ですねぇ!どうしたんですか?」
「…ああ。朝いつも待ち伏せしてる暇なゴミに押し付けられたんだよ。薔薇に罪はねぇ。花瓶にでも差しておいてくれ」
「分かりました!へぇ…珍しい色ですよね」
「ん?」
綱吉は薔薇をしげしげと見詰めた。
白い大きな薔薇は、よく見ると白い花弁に真っ赤な色がマーブルになっている。
「ツツジではこういうの見た事あるけ、ど」
綱吉は言葉を止めぎちりと固まった。
白い艶やかな花弁の上で赤が、つう、と滑ったのだ。
散らばったマーブルは良く見ると緩く盛り上がっていて、傾けると一斉に重力に任せて滑っていく。
綱吉はギチギチと視線を上げていった。
目の前のディーノが朝日を浴びてにこと笑った。日に透ける白いその頬には花弁と同じ赤が散っている。
「その薔薇、丈夫だったぜ」
綱吉は声にならない悲鳴を上げてその場に倒れた。
目を覚ましたら同じ場所に倒れたまま放置されていて、体の上にいくつもの足跡があった。
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