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進路指導 2

CP:むくつな、白正

骸がなんかもうヤンヤン
素直になれない思春期真っ盛り

よろしければどうぞv
今日も綱吉をぼこっとしてしまった骸は、ささやかに反省しつつ教室の扉を開けた。
いつもは終業のチャイムと共に消える白蘭が珍しく居残っていて、面倒臭そうにシャーペンを揺らしていた。

「骸クン、進路希望調査出した?」
「え?」
「今日までらしいよーディーノクンに呼び出されるの面倒だから出しちゃおうと思ってさ。」

ああ、と骸は興味のない返事をした。

そういえばついさっき、スパナが呼び出しを食らっていた。確かに面倒そうなので、骸も今書いてしまうことにした。白蘭の席の後ろに腰を下ろすと、白蘭が本当に面倒そうに振り返った。いつもと違って大層締りのない顔をしている。

「僕たちって頭いいじゃん。進路なんてもう決まってるでしょ。入学したばっかで進路調査なんかするんだから、先が思い遣られるよ。」
「どこかの馬鹿がキングモスカと書いて呼び出されてますよ。」
「スパナクンってそういうところ、アホだよねー現実的なものを適当に書いておけばいいのに。」

ごもっともだと思いながら机の上に置かれた白蘭の希望調査票を見た骸は、動きを止めた。

「モスカを造る科学者、とかならスパナクンだったら現実的なのに。って言うか何でスパナクンはモスカになろうとしてんの?モスカって機械だよね?」

平然と話す白蘭に視線を移してから、もう一度腕の隙間から見える進路希望表を見てやっぱり動きを止めた。

「それはどういうことなんですか?」
「え?」

きょとんとした白蘭に、机の上を指し示す。それでも白蘭はきょとんとしていた。

「第一希望って」
「キングモスカは機械だから、どう頑張ったて人間は機械になれないでしょ。その点神はナマモノだからね。」

白蘭の第一希望は新世界の神だった。

「ナマ・・・神ってナマモノなんですか?」
「何言っちゃってんの、骸クン。ナマモノだよ。だから人間は神になれんの。ああでも、選ばれた人間しかなれないけどね。」

骸からしてみればキングモスカも神も同じようなものだし、幼稚園の頃から聞かせられている白蘭の神論はいくつになっても理解出来ないし理解しようとも思わないが、白蘭を神と崇める人間が増えてきているのは事実ではある。
理解出来ないけど。

「どうせ呼び出されるなら正ちゃんがいいな~」
「誰ですか?」
「ヤダナ、本当に人の話聞いてないよね。正ちゃんは隣のクラスの副担任。」
「なぜその人間に呼び出されたいのですか?」
「考えてもみなよ。狭い進路指導室に二人きりでさ、好きな子が目の前で自分のことだけ考えて自分のことだけ心配してくれるんだよ。興奮するじゃん。」

白蘭の性癖も理解し難い部分しかなくて良く分からないが、ただ、自分に置き換えたときを考えると、綱吉が自分のことだけ考えて心配してくれるのは嬉しいかもしれない。どうしてそれで興奮するのかは全然分からないけど。
白蘭はそうだ、と紙にシャーペンを滑らせた。

「こうやって書けば正ちゃんが出て来るかもしれない。」

どう書けばいいのか気になった骸は白蘭の手元を覗き込んで絶句した。

第一希望の横に括弧で括って(嫁は正ちゃん)と書いていた。

「馬鹿か・・・!?」
「え?」
「嫁って・・・結婚するということですよね・・・!?」
「骸クンが興奮するポイントが分からないんだけど。」

白蘭にそんなことは絶対に言われたくないが、骸は脳内で両親のことを思い出していた。
骸の両親は事あるごとにちゅうちゅうしてるし、同じ空間にいて体を触れ合わせていないことがほとんどないし、風呂は毎日一緒に入っているし、愛してるだの可愛いだの何だの言い合い過ぎていし、パジャマは(骸も)お揃いだし、骸は見慣れてしまっているがとにかくこの一言に尽きる。

「破廉恥だ!」
「どんな想像してんの?」

両親のお陰で結婚=そんな生活しか思い付かない。

「あーもしかして僕が正ちゃんと結婚したら、部屋の中は基本全裸で着ていいのがハイソックスかエプロンか僕の体操着上だけで生活するとか思ってる?その通りだけど。」
「・・・!?」
「あ、今綱吉クンに変換したでしょ?」

頭を抱えた骸に白蘭は楽しそうに言う。

「なぜ沢田綱吉が出て来るんですか・・・」
「ダメだよーツンツンするのもいいけどね、僕たちまだコーコーセーなんだからさ、それだけで相手にして貰えない可能性だってあるんだよ?」

骸はぴくりと反応する。

「年下は論外とか言われないように、頼りになるところとか優しいところも見せなくっちゃ。」

頬杖を突いてにこ、と笑った白蘭は窓の外に目を向けて「お、」と呟いた。

「噂をすれば正ちゃん。見てなよ、僕の生き様。」

白蘭の生き様なんて心底どうでもいいが、何か参考になるかと窓から飛び出して行った白蘭を目で追う。
白蘭は渡り廊下を歩いていた正一に駆け寄りながら大きく手を振った。

「正ちゃん、やらせてー♪」
ざわ、と周りの生徒たちが青褪める中、正一は腹を押えてしゃがみ込んだ。

「う、お腹いたい・・・」

白蘭はしゃがみ込んだ正一の傍で膝を突くと、顔を覗き込んだ。

「お腹痛いの?大丈夫?家まで送るよ。あ、家の場所は知ってるから任せてね☆」
「な、んで知ってるんだ・・・」
「合鍵も持ってるよ☆」

満面の笑みで自分のキーケースから鍵を見せ付けた白蘭を見て、なんでだと最後の言葉のように呟いてから、正一はその場にぺしゃりと倒れた。


まるで参考にならない。

確かに頼りになるような雰囲気と優しい雰囲気を醸し出しているようにも思えるが、ただの変質者にしか見えない。

呆れ果てて一回瞬きをした隙に、白蘭と正一の姿が見えなくなっていた。

ご愁傷様だが、骸は二人の行方はどうでもいいので机の上の白紙のままの進路指導表に視線を戻した。


そうだ、少しは素直にならなくては。


骸は意を決して第一希望の欄にシャーペンを置いて一気に滑らせた。

ふと視線を上げると白蘭の進路指導表がそのままになっていたので、珍しくまぁまぁなアドバイスをしたので一緒に提出してやることにした。


骸の第一希望「沢田綱吉を殺す」


白蘭も骸も結局ディーノに呼び出された。

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