今日も悩ましげな溜息を吐く骸の前に、写真が一枚差し出された。
怪訝に視線を上げれば、スパナがいつものように飴に付いた棒を緩く動かしていた。
「ん。やる。」
「何ですか?」
「わ!綱吉クンじゃ~ん☆よかったね、骸クン。」
「はあ?何で僕が彼のしゃし、」
骸は呆れたように眉根を寄せて視線を下げてから、写真を二度見した。
二度見した後完全に動きを止めた。
「あれ?骸クン、生きてる?」
「六道が欲しいかと思ったんだけど。」
骸は目を見開いたまま呼吸まで止まっているように見えた。
「これ興奮してんの?」
「六道は意外に純粋だからな。」
スパナが手に持つ写真の中で綱吉は大きな目を泣きそうに潤ませ、そして、何も着ていなかった。
映っているのは上半身だけだが、その透けるような白い肌が骸の視界に刺さるようだった。
どこでこんなものと問い詰めて吐かせて制裁を加えなければならないが、骸の指は無意識に写真に伸ばされていた。
戸惑う指先が写真に触れそうになる。
「あ、体の部分は白蘭だ。」
写真に触れそうになった指先はぴくりと止まる。
「スパナクンが合成してくれたんだよ☆」
ふる、と揺れた指先は広げられ、おもむろに写真を握り潰した。
「・・・殺されたいようですね。」
ゆらりと立ち上がった骸の肩に、スパナはぽんと手を置いた。
「その怒りを忘れるな、六道。」
言って踵を返すとばっと窓から教室を飛び出した。
「あ!ずるいよスパナくん、意味分かんないこと言って逃げるの。」
追うように窓から顔を覗かせた白蘭の背後に殺気がゆらりと立ち上って、一瞬ぎくりとした白蘭だったがすぐに笑顔で振り向いて、教室の出入り口をばっと指差した。
「あ!綱吉クン!」
ばっと振り返った骸を尻眼に白蘭も窓から飛び出した。
綱吉の姿はそこになく、謀られたと分かって舌打ちをしたときにひょっこりと淡い色の髪が出入り口から覗いた。
目を見開いた骸の視界で綱吉があ、と言って微笑んだ。
「骸くん、まだ帰ってなかったの?部活とか入るの?」
にこにこと笑って近付いてくる綱吉に、骸は手の中の写真を握った。
この手の中の綱吉は顔だけが綱吉なんだ。
体は心底どうでもいい白蘭のなんだ。
分かっては、いる。
にこにこと近付いてくる綱吉に心臓がばくばくと音を立てる。
「骸くん。」
すぐそこでにこと微笑まれて、どきりと心が苦しくなった。
苦しくて、切なくなる。
切なくなって、思わず言ってしまうんだ。
「殺す・・・!」
「何で!?」
校庭を横切るように必死で走る綱吉の後ろを見事に殺気だった骸が追い掛ける。
追い付くのは時間の問題だ。
「六道照れてるな。」
「うん。でもそれが分かるのって僕たちだけだよね。」
「うん。あれじゃ伝わんないな。」
大変だね~と言いながら逃げ込んだ準備室で、勝手にお茶を飲み出した白蘭とスパナの目の前にちらちらと桜が散る。
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